SLOWMOTION@神戸塩谷 旧グッゲンハイム邸


20130622(Sat)
SLOWMOTION@神戸塩谷 旧グッゲンハイム邸に行ってきました。
うつくしきひかり×VIDEOTAPEMUSICのライブを観てきた、と言ってしまうのは少し乱暴に思うほどに「SLOWMOITON」というPartyまるごとを体験してまいりました。

――SLOWMOTIONを浴びる。
その表現が共有しうるものなのか自信はありませんが、きっとあれはそういう体験だったのです。



早朝、新幹線で神戸へ向かう!
三宮に降り立ち、海沿いや元町商店街をぶらつく。長崎と神戸は歴史的背景や地形などかなり似ていると思ってきたのですが、おなじとちがいが今回もう一つずつ見つかりました。おなじは双方痛みを背負った街だということ。海沿いを歩くと震災の爪痕を残したモニュメント。逆に、神戸の方が人が多い。個人的にはやはり長崎のちょうどいい密度が好きです。

「おいしいコーヒーはありませんか?」と地元の人に訊いて薦められた「にしむら珈琲」で落ち着く。

接客含め素晴らしい高級店。ケーキセットを焦げ香るアイスコーヒーと一緒にいただく。
文句はあるはずないけど次回は街人の日常に溶け込んだカフェにも行きたいな。のち、塩谷へ!

阪神電鉄の各駅停車(意図せずゆっくり!)で山陽塩谷駅に向かった。

初めて訪れたこの町に何度も来たことがあるように感じるのは、列車が海沿いを走るあの景色が海の上を走る鉄道、熊本のおれんじ鉄道と重なったからにほかなりません。

商店街を抜ける。犬の散歩をするおばさんとすれ違う。国道を挟んで望める海に手を伸ばしてから線路を渡る。陽が沈むには少し早い。少しだけ緊張しながら、階段を上った。

到着後、中川さんにご挨拶。
「お酒は飲めますか?モヒートがおすすめです。ミントはその辺で摘んだ(!)ものみたいですよー」



庭に漂う草薫る風。みんなの談笑の間を抜けていく。
ぼくは縁側に腰掛けて青すぎる空を仰ぐ。
小鳥は一羽ずつ同じ角度で屋根を横切る。

地面に届かない足をブラブラ。背後にはグッ邸から漏れる低音。
小さなドラキュラは茶色い線香が焚く狼煙から身を隠す。
VIDEOTAPEMUSICのライブが始まるころ、気づけばモヒートに浮かぶライムのようなお月様がのぞいていた。




すごいんです、グッ邸って。グッ邸が鳴るんです。まるで楽器の内側にいるみたいで。
グッ邸が大きな楽器となってその内側でぼくらはその鳴りに耳をすませていた。
MC.sirafuさんは「ここ(グッ邸)を一番鳴らせるのは西川さんだと思ってる」って言ってた。

VIDEOTAPEMUSICのライブを観るのは初めてだったかもしれない。
床上2.5mに音楽を映写するように音を鳴らす。漂う音。揺れるぼくら。
鍵盤ハーモニカからこんなに伸びやかなメロディーが生まれるものなのか!
頭出し出来ていないビデオとかその日限りの映像とか含めて、とても心地よかった。

そしてこの日、うつくしきひかりはいつかのVACANTとほぼ同じ構成を持ちながら、さらにやさしさと嬉しみを増し増しに音を鳴らしていたのです!言ってしまえば、アルバム以上にやさしく近く鳴っていたのだ。スティールパンの音が角張って乾いた瞬間ってまれにあるけど、スティールパンもいままでで一番やさしく鳴ってたと思う。
リフレインのアレンジを変えた「セカンドライン」から始まる。
「木漏れ日のうた」は力強く歩くように、なにかが始まるように始まるから好きだ。

帰る家を間違えるなよ 最後に音楽流れて

その後、アリさんの「座ってみた方がいい気がしますが?」との提案にみんなせーので座り出す。非日常とは思えないほどの居心地。

SLOWであることにアクセントがおかれがちですが、どちらの音楽もしっかりMOTIONしていました。

とはいえ、SLOWであるということが時間あたりの移動距離が少ないということを意味するとしたら、しかしそれはなんとぜいたくで豊かなことなのだろうか。



パーティーは終わる。満ち足りた月を見ながら、レシピを少しアレンジしてくれたモヒートを飲む。庭の中央に位置するテーブルでまったる。中川さんとwandaさんとsirafuさんとミノダさんの談笑に混ぜてもらった。中川さんとwandaさんの出会いの話を聞いた。その後、wandaさんとミノダさんのイメージと違いすぎるキャラにひとしきり笑い、なぜか少し安心する。
ぼくはこの人たちの温度と空気感が好きなのだな、と思った。


ちょっと言っておきたいこと!この日、一人で来たぼくに心を配ってくれて、中川さんはふとしたタイミングで何度も声を掛けてくれたのがうれしかった。ありがとうございます。翌日に控えた下北インディーへのエモーションが印象的だった。


今年の誕生日に立てた目標は
1.遠方のライブに行くこと
2.気のいい音楽家たちともっと交流してみること
だったのでちょっとだけコマを進められた気がしてうれしい。


SLOWMOTIONというパーティーは確かに音楽が中心にあるのですが、すべてを包むその密度のゆるやかな空気にこそ核心があるように思います。あのPartyの穏やかさや安らかさなんて、ともすると日常のスピードや生活のなかの事件に飲み込まれてしまうかもしれないけど、そんな微弱な振幅だからこそその振幅がながく続くこともあるだろう。
そうだ、安らかさの飛距離に耳をすませそう。きっと今日もグッ邸は静かに鳴っている。