「リトルメロディ」七尾旅人
かつての「COVERS」のように聴く側の想像力と音楽的語彙の貧しさから、
作品が反戦・反核解釈のみに矮小化された失敗を、
私たちは繰り返してはいけない。
あのアルバムとこのアルバムは、
そんな狭い視野で見る景色ではないのだ。
8月7日、ジャケットからもうぼくには伝わった。
- アーティスト: 七尾旅人
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- 発売日: 2012/08/08
- メディア: CD
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ぼくはいま、先日「名盤かどうかだけが興味がある」なんてことを
偉そうに書いてしまったことを猛烈に反省している。
そんな反省を抱えながら、
このアルバムについて書かざるを得ないこの衝動。
アルバム2曲目に「圏内の歌」
子どもたちだけでもどこか遠くへ
離れられない小さな町
現在、極東のリアルの極地はこのアルバムにあるのかもしれない。
そんな予感で満たされる。
このアルバムには沈黙と隙間が沢山ある。
――そうだ。
何かを選んで生きていくことにしたぼくらには、
きっと休符が必要だったのだ。
キリシタン狩りのなか、神様の「沈黙」に絶望した末に、
沈黙の寄り添いに希望を見いだす遠藤周作の「沈黙」。
- 作者: 遠藤周作
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1981/10/19
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3.11前からの閉塞感を抱えて生きる3.11後のぼくらは、
休符がつなぐ「リトルメロディ」に新たな希望を見いだすだろう。
「サーカスナイト」につながるストーリー。
夏が君を変えてゆく
一生分のこと 変えてしまいたい 今夜のキス
そんな夏のキスは、こんなふうな小さな調べかもしれない。
サーカスナイトの物語に酔いしれていると、突然針が刺さる。
どんなにそれが絵空事でも飛ぶしかない
小さいときに布団で読んでもらったような物語と、
3.11後の今がぴったりと重なる瞬間。
それはまるで、今年の5月21日の朝に空に見た指輪のようだった。
8曲目「劣悪、俗悪、醜悪、最悪」は
RCサクセションの名盤『シングル・マン』の
「レコーディング・マン」を連想した。
- アーティスト: RCサクセション
- 出版社/メーカー: USMジャパン
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無音だけではなく、
砂嵐のようなノイズもふんだんに使われてるのだが、
それもきっと彼が置く沈黙への信なのだと思う。
かつて、あるバンドはこう歌った。
「音楽は何のために鳴り響きゃいいの?」
七尾旅人はきっと、その答えを出したのだろう。
一つの答えを。
帰る場所をなくした人を、ぼくらは知ろうとしなきゃいけない。
そして、彼らに寄り添う小さな調べがあればいいと願うのだ。
いいことがあるといいね、きみにもぼくにも。
社会の窓はあけておきたい。