木下美紗都・ホナガヨウコ「君の知らない転び方」@こまばアゴラ劇場

木下美紗都ホナガヨウコ「君の知らない転び方」を観た。

起伏のない物語、凹凸のない関係って退屈だと思う人も当然いるはずだから、昨日の物語を退屈だと断じる人もいると思うけど、劇中でのあるセリフのように、大したことない日常って悪くない。かもなって思う。いや、退屈って思う時もあるかな、やっぱ。正直にいえば。少なくない数の人って、たいしたことなさに揺れてるんだと思うんです。ふがいなさと肯定の間で。
でも昨日の物語が退屈にならなかったのは、たぶん昨日の物語を発した二人がかっこよかったから、かもしれない。

一年前から実際に二人が通わせたという手紙。劇中に出てきた手紙の内容なんて、中学生の授業中の手紙くらいほーんとーにどうでもいいことだったけど、どうでもいい話ができる関係って貴重だなーとあたりまえのことを。蓮沼さんが言ってたみたいに、ぼくも劇中のハルとヨルを二人に重ねましたよ。

すぐに忘れてしまいそうで意外なタイミングでふと思い出してしまう物語だと思う。日常の出来事って、そういうもんだから。

はじめの、セリフのない舞と、単数の重なる音楽が交わる緊張感。はじめに踊りありきで音楽を付与していく試みであることは、すぐに理解できた。

それから手話って踊りとして面白いなぁって再発見!今回これが結構新鮮な発見だった。

ホナガヨウコの描く流線は空手の型のようでありながら、その反復はいつかひずみとなり型を外れたスタイル、個性へと変わる。ホナガヨウコは身体の線を出さない衣裳(SOUSOU)でありながら、抜群な身体能力の影に流線のエロさと直線の真摯、曲線のキュートなポップネスが瞬時に交差していく。
あれだけの踊り見せられたら本気になって転んでみるかって思います!転び方なんて覚えればいいのだ!

個人的には、物語よりも、ホナガさんの踊りにやられました。
見せ方ではなく、見え方を考えてるように思った。

木下さんのアコースティックギターは初めてで擬音語の音楽は青葉市子と重なった。なんというか、ライブでした。的確に鳴っていた。

ちなみにアンケートで聞かれた好きな駅名は上中里。かみなかざとって、小さい頃は「かみな・かざと」だと思ってて、感じが分かるようになってから「かみ・なかざと」だと知ったときの感動よ!東京23区いち、なにもなさがある駅です。

かみなかざと、良い響き。