クラムボン「えん。」@シネマート新宿 公開初日

昨日はクラムボン「えん。」を観てきた。公開初日。
レイトショーだから少し敷居が高い気もしたけど、雨の休日、夏に向かう季節に押されて、ちょっと夜の冒険まがいのことがしてみたくなった。
埃くさい湿気を感じると、ワクワクと昂ぶるのはなぜだろう。

クラムボン「えん。」



 

 

去年のよみうりランド2daysのライブ。2日とも行った。ハンディでの先行含めて2度逃して一般でやっと取れたけど席が残念すぎて両日とも端っこの端っこ。距離が遠くて、細部の演奏や表情までは全然見えなかった。でも!それでも!クラムボンのライブであることに変わりはなく、初日は移ろいゆく夕暮れから落ちてきそうなほどの夜の静寂に、二日目は切り裂けるほどの夏の日差しに、二日とも感動と幸福に包まれていた。

――はじけることのないシャボン玉。
この映画を観ながら浮かんだ言葉だった。
はじけてしまった無数のシャボン玉。はじけてしまうから美しい。一回だからこそ美しい。それはきっと嘘ではない。はじけずに残っていられるのは心の中だけだ。
でも、この作品は残っている。そして美しい。楽しい。嬉しい。そこにあるのは2時間6分の魔法だ。魔法はきっと魂こもった仕事にだけ宿るのかもしれない。

めくるめくシャボン玉に乗って水星にでも旅に出ようか?

小淵沢の夏感が絶妙で、生活の呼吸に合わせて音楽が鳴っている。清流に注ぐ斜光。虫たち、鳥たちが鳴らす生。木々が生む緑。開け放つ窓。出入りする空気。吹き抜ける風。湧きたつ熱情と食欲!

ライブに行くと、音楽家の音楽に対する姿勢に触れる瞬間がある。このDVDではその接近に成功している(それは特に小淵沢やスタジオでの時間が貢献していると思うが)。おそらく誰もが多幸感に包まれるだけでは終わらず、あの3人が追いかけた末の一音を意識せずにいられない。どうしてもうまくいかずにスティックを叩きつける大ちゃんの姿に、失踪しようかと思ったとつぶやく郁子に、ステージで吠え続けながらベースを弾くmitoに、仕事でもプライベートでもなんでもいい、自分にはそれだけ賭けているなにかがあるのか?と問いかける。いや、3人だけではない。彼らを支えるスタッフに、この作品をつくり上げた太田さんに、姿は映っていない誰かに、その問いを持ってしまってもそこに矛盾など一つもない。

これは絶対に映画館で見るべきです!最大の理由は、ストリングスの厚みにぶっ飛ばされる経験は家のTVではちょっとできないからです。ライブに近づけた形の音、というか臓物が揺れ響く体験をぜひしてもらいたいのです。

ぼくは金曜日にもう一回行きます。
初日は席だいぶ空いていました。
金曜日もまた、いい雰囲気で観たいですね。