Stand by me@神田川〜神田川は下るに限る。〜

金曜日は会社の新入社員と2年目の懇親会だった。その後同期と二次会。
この時点で土曜日の予定は何も立っておらず。

ある同期から「●●も明日野球観戦来るの?」と誘われてもいないのに確認される。無邪気な爆撃を華麗にかわしながら飲み会を去る。あなたその攻撃2週連続だけど、もうその程度じゃ傷つかないんだからね!

――天気がよさそうだし、公園に行こう!
寝る寸前、羽田空港近くの飛行機が見える公園に行って美味しいもの食べる休日にしようと決めた。

夢を観た。
実家は団地だ。その部屋に2匹の白いネズミ。少し大きくてまるくて真っ白なネズミ。それを狙う1匹の猫。はやく動画取らなくちゃ!とか意味わかんないことを考えてる間に起きた。まだ6時だった。そんな夢を観て混濁した微睡みを泳ぎながら二度寝に入る刹那、今日は動物園に行くことに決めた。

昨日帰りがけ「楽しそうな予定があったら誘って。なかったらあいつYoutube見てるんだって思っとくわ。笑」と約束とも取れない淡い約束を結んだ同期を誘う。しかし連絡がないので一人で出かける。地元の駅に着く。電話が鳴る。

少し遅れるということだったのでユニクロでAirismを買って夏の会社に備える。
新宿タワレコで時間をつぶしあまちゃんのテキストに涙を浮かべ、合流。吉祥寺に向かう。

中央線で三鷹まで乗ってしまったので1駅歩くことに。
山本有三記念館の佇まいがあまりに素敵だったのでしばし立ち寄る。ああいう庭のある家が欲しい。

吉祥寺の井の頭自然文化園に着いた。目当てはしわしわの皮膚の象、花子。予想外に大きい動物園を堪能した。リスって速いのね〜。おじさんびっくりしちゃった。
あと、動物園って家族連れが多いし、こどもの様子を観てるだけでおもしろいす。イノセンスおすそわけ!

サンドイッチとアイスコーヒーを食す。近くに座った男の子に「ねえねえ、かきごおりも売ってるんだよ!!!!」ってすごいテンションで教えられてちょっとひるむ。次の予定は美味しいかき氷を食べに行こう。

井の頭公園をぶらぶらして、吉祥寺の街をぶらぶらして、目的を失った僕ら。
隣にいる同期は「まだまだ元気!」とのこと。結構歩いているので正直カラ元気なのか分からず、思い切った提案でどちらか探る。
「いまさ、次に何するかで迷ってるんだけど、カフェ入ってゆっくりして美味しいもの食べに行くか、神田川下りまくってどこまでいけるか試すの、どっちがいい?」

井の頭公園の池をぐるぐる回る中、ぼくらはあの池の水が神田川の起点になっていることを学んだのだった。ということは、この川を下れば高田馬場御茶ノ水の方に着くのかもしれない!
個人的には冒険みたいでわくわくしたが、結構歩いているので「やろう!」とは言いだしづらかったので選んでもらう。

しかし予想外に川下りを選ぶ同期よ!
アントニオ猪木も言っていた。

この道を行けばどうなるものか。危ぶむなかれ。危ぶめば道は無し。
踏み出せばその一歩が道となりその一歩が道となる。
迷わず行けよ。行けばわかるさ。ありがとーーーー!!!!(暗誦中)

Stand by meの始まりだ!

丸井でトイレを借り、コンビニで酒を買う。
繰り返しだが、この時点で二人は結構歩いているため、疲れたらお互いに素直に申し出る約束を結んでから歩き出した。

羽虫が飛びまくる線路沿いの長いダンジョンを越えていくと、いつの間にか久我山駅に着いた。
なんと久我山駅ではこの夏初めての祭りが行われている。奇跡か!ツ・イ・テ・ル!

規模の小さなまちの祭りだった。大好きだ。少ない出店を並び、焼そばを食べる。珍しく恋愛の話なんかをして、子どもたちの遊びが何も変わっていないことに安心をした。

そのまま川を進みだす。なぜか行列が途切れない。どうやらこの日は蛍の放流日らしい!奇跡か!!!ツ・イ・テ・ル!!ツ・キ・ス・ギ・テ・ル!!!

夏は始まっていた。明滅する淡い光がその合図なのかもしれない。蛍を「星垂る」と評した人の気持ちを穏やかさの中で抱きしめる。この奇跡で奇跡を止めても良かったのだが、もうアドレナリンが止まらない二人はぐいぐい進んでしまう。
そう、神田川は下るに限るのだ!かぐや姫的センチなフォーキズムなんてレッテル、上書きしちまえ!!

途中、ブランコに乗ったり、音楽を聴いたりしながら、進み続けた。
初めは古い家屋が多かったが、下るにつれ徐々に河自体も整備される。比例するように新しくシャレた住宅も増えていく。下ってみないと分からないこともある。

途中から始まった「スタート地点から何km」という看板をやりがいにここまで歩き続けた。井の頭公園から始まり、三鷹台、久我山富士見ヶ丘、高井戸、永福…。もはや地名すらも定かではない。途中神田川井の頭線は沿っては離れを繰り返すためすべての駅を通ったわけではない。しかし相当歩いた。もはや距離にして何kmかどうかなんてどうでもいい。駅にして笹塚近くまで来たとき、ぼくらは歩き、歩きまくり、気づけば0時近くだった。終電のことを忘れていたのか、考えないようにしていたのか、そろそろお互い足も疲れた。こんな距離を歩くのは絶対に1人では無理だ。野球観戦の3億倍楽しいぜ!

タクシーで新宿に帰ろう。お互い、ぎりぎり終電を捕まえることができた。次の約束を結び、別れた。ぼくらのスタンド・バイ・ミーは終わり、2013の夏が始まった。今年の夏は、きっと最高の夏だぜ!