ザ・なつやすみバンド、あだち麗三郎クワルテッット@横浜中華街 同發新館 ROMANTIC CHINATOWN

2015/9/20(日)、なつやすみバンドとあだち麗三郎クワルテッットの2マンライブ(ROMANTIC CHINATOWN)を観た。

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横浜中華街の同發新館、奥のスペース、原宿VACANTをもう少し広く、エキゾチックにしたような空間だ。
お店では普通にお客さんが中華菓子をあがっているその合間を縫って入っていく。

会場に入るやそのスペースの使い方の贅沢さにため息が漏れた。同時に心拍は気持ち早まる。

この広さのスペースに70席程度だろうか、背もたれのある椅子が数十㎝程度の間隔をあけて千鳥に配置されていた。
なんたる贅沢。
空間に対してお客のスペースが広くて、お客さんひとりひとりが受けとる音の粒の量が多い、とでも言えばいいのか。

天井からはシャンデリアも下がりましょう。
装飾はチャイナタッチで、空間をチャーミングに色づけている。

なつやすみバンドにとってのあだ麗さんの関係を抜きにしても、この2バンドのライブ、行かないわけがない。

この日のライブはsirafuさんがしきりに宣伝ツイートしていた。シラフさんが勧めたイベントであんまりだったことなんてこの数年間で一回すらなかった。
連休の中日で予定が詰まっていたこと、明日からのSIFCに備える気持ちもわかる。が、この日は来れる人は来るべきだったとおもう。偉そうな言いかたを許してほしい。
ぼくたちは因果関係を遡ることしかできない。

当然ライブは素晴らしかった。
まず、ザ・なつやすみバンド。音響がハウってしまう瞬間は少しだけあったが、もうそんなことは関係ない。

シラフさんは冒頭エモりが過ぎてスティールパンとシンセをヘッドバンキングしながら叩きまくり、マンタスクールキャップをどこかにふっ飛ばしていた。短い前髪と長くうねるサイドの髪を振り乱しながらソウルフルな演奏を尽くす。この人の音楽的な誠実さはどこまでいってもかっこいい。そのあと少し恥ずかしそうに帽子を直してたところもかわいい。


演奏した曲を中川さんに確認したが、夏の魔法(vo.中川さんver.)、ユリイカ、めくらまし、DIY、echo、風まち、SSW、ラプソディー、パラード、ハレルヤだった。

とくにラプソディーからパラード、そしてハレルヤへと続く歩みは、さながらこの日の彼らのハイライトだった。

確かな敬意を込めて正直に告白すると、ラプソディーを初めて聴いたとき、ぼくはその繰り返される転調癖と曲のおどろおどろしさがどうも好きになれなかった。
複雑さが理解できなかった、いや向き合い方がわからなかったのかもしれない。

しかし8/30のキチム然り、最近のラプソディーはどうだ。2014年の冬あたりから少しずつ演奏が研ぎ澄まされていくような感覚を得ていたが、明確に変わって聞こえたのは渋谷duoでの春のワンマンあたりからだ
(渋谷duoのライブは関口さん田島さんあだちさん古川さん宮下さんホナガさん全世界少年少女大合唱など大勢のサポートの力もあってか、まさにいままでのベストライブだったとぼくは証言したい。)
ザ・なつやすみバンド、メジャー初ツアー終了「今後も変わらずやっていきます」 - 音楽ナタリー

話を戻そう、この曲の化学変化におおきく貢献したのはみずきちゃんのドラムだ、と勝手に言ってしまいたい。演奏が圧倒的だ。
彼女は元々、見た目とは裏腹の、とてもかっこいいドラムを叩くが、最近のラプソディーはマジですげえ。じぶんにとって光永さんのドラムはちょっと特別なドラムなんですがみずきちゃんのドラムもそういうタイプのものになりつつあります。
ラプソディーがハイライトになることを過去のぼくは想像できていなかった。
もし最近足が遠ざかってしまっているファンがいれば、この曲だけでも聞きに来てほしい。

2ndアルバムの転調癖は彼らの演奏スキルを飛躍的に伸ばしたのかもしれない。

いまのラプソディーに物語は必要ない、演奏だけでお客をちぎって、背中の見えないところまで走り去っていく。

言ってみればラプソディーはカフカだ。次の一文が予想もつかない。たどり着けない城や変身する虫を、ぼくらはそれを不条理と呼んでみたり、比喩に解釈してみたりするが、結局その演奏の予想もつかない展開、一文に尽くした言葉や音にこそ魅力が詰まっている。演奏をそのまま味わえばいいのだ。

ぼくらの感動が目の前の景色に十分に追い付かないうちにパラードが始まる。このときの感情をぼくの筆力では到底すくいとれない。
身体の現象だけを説明すれば、まず胸が熱くなった。その熱は気管支を通って顔に昇り左頬あたりの筋肉を震わせた。その熱の中、あるいは外側にあった感情をこそ説明したいのだが、ぼくには到底捕まえられない。

ライ麦畑で捕まえてよろしく、
I wanna be a キャッチャー イン ザ ライブハウス
I wanna be a キャッチャー イン ザ ミュージック

おもちゃ箱のなかで早送りでドタバタ冒険してるみたいなラスト、そのなかで中川さんは斜め30度上を見つめ歌を歌っていた。

そしてハレルヤ。
これぞなつやすみバンド。

中川さんは初心に帰った、みたいに言っていたけど、これぞなつやすみバンドなんじゃないか。

気づけば身体を揺らしてしまうポップなメロディー、つい笑顔になってしまう細かに決めてくる外しのアイデア、目の前の景色や音に希望を感じずにいられないコミュニケーション。

そのすべてが、ぼくらの大好きななつやすみバンドじゃないか。

ーー日々は旅だ

そう、日々は旅だ。
バンドのツアーも残すは沖縄。
神戸や岡山、島根を回ってきた中川さんと是非話したいことがあった。

フジロッ久(仮)との島根のツアーだ。
会場はHOME、あのたぬき音楽祭の舞台。

ぼくはなつやすみバンドと同じくらい好きなバンドがいくつかある。片想い、HAPPLEもそのひとつで、すきなバンドは他にもたくさんあるけど、フジロッ久(仮)というバンドだ。
歌詞や口上があまりにまっすぐで、演劇でもみてるんじゃないかと錯覚するバンドだ。演劇や音楽にこそリアルって宿るものだ。虚構って突き詰めてくと急に反転して一瞬現実になったりするから。

ツイッターをみる限り、両バンドがお互いにお互いを讃えていた様子だったので話を聞きたかった。

詳細は伏せるがひとつだけ。中川さんからはフジロッ久の藤原さんとぼくのことを話した、と聞かされた。(!)
驚いた。嬉しかった。

ぼくは藤原さんとは話したことがない。
今度ぜひ挨拶しよう、と思った。



あだち麗三郎クワルテッットは久しぶりに見る。新メンバーになってからは初めてかもしれない。

全編に渡り、バンドのグルーヴが強かったからか、椅子に座りながら前に横に、ぎこちない踊りを続けることとなった。


Show me your original dance
(ぎこちない踊りを見せて)


まず、ドラムとベースがすげえ。リズムを手なずけるような楽器の扱い方をしていて、演奏によってリズムが伸縮するような自由さがある。

ピアノの谷口さんは数回だけ観たことのある森のときにはすげえクールなイメージだったのに、あんなに楽しそうに気持ちを表に出して演奏する人なんですね。谷口さんもとてもエモかった。

あだちさんはサックス吹いたり歌ったり、かと思えばバーカッションするし。

楽しい。曲のすべてが楽しい。曲調の問題じゃない。お客も音楽をしているときにはこういう感覚になる。

ベルリンブルー、Yellow Rice Flower、ぱぱぱぱからの曲、夏の新曲(これ素晴らしかった)、そしてなつやすみバンドとの共演。

だいまんぞくのなかにライブは終わった。

ライブのエモりを積分してしまったのか、日々のおそれや不安を微分してしまったのか(何を言ってるのか)、怖いものがなくなったぼくは夜の山下公園へと歩みを進めた。

当然、あの場で男一人なんてハートの強い弾き語りとぼくくらいのものだったが、カップルの邪魔をすることなく、夜の横浜の海を満喫した。

ぼくがこのブログを始めたのは、その日のライブの魅力の数ミリでもいいから、観てない人につたえてみたいと思ったからだった。
いままでに一回でもそれができていたのかはわからないけど、ぼく自身の怠慢さゆえ、いつのまにかこのブログから足が遠ざかっていた。

今日のライブを見て、この気持ちの数ミリでも、見ていない人に伝えたいと思えたので、そして見ていない人に自慢したいと思ったので、また書いてみました。

いまのこの二つのバンド、ぜひ皆さんにみてもらいたい気持ちです