高尾山に登る。

高尾山に登った。
静かに雨が降り、道には薄もやがかかっていた。高尾山はもう少しで雪山だ。

道すがら、ひょうが降っていた。一時間経っても止まない。なんか変だと思ってよく観察すると、枝の先の水滴が凍り、その氷滴が落ちていたのであった。

氷滴がコロコロと道を横切る様は、とても愛くるしい。

氷滴が転がる姿に足が運ばれるように山道を進む。
低い山でも空気は澄んでいてうまい。
途中、どくだみの香りが漂う場所があった。

どくだみには少し奇妙な思い出がある。あれはたしか5歳のときだった。
ある日、保育園の庭の片隅に、飛べない鳩がたたずんでいた。怪我をしたのかもしれない。
子どもの頃、どくだみは薬草だと思っていたぼくは、保育園にあるどくだみを10枚程集めて、鳩の座る場所に敷いた。
翌日、そこに鳩の姿はなく、どくだみだけが散らかっていた。

その時のぼくはどくだみで治った!などと、どくだみ効果に感激していたのだけれど、もしかしたらどくだみの香りが嫌で逃げ出したのかもしれないし、そもそも怪我なんかしてなくて飛べたのかもしれない。

鳩と言えば、昔ぼくの住んでいた団地のベランダで鳩が卵を産んだことがあった。
無事に孵り、雛は我が家から隣の家へと渡り歩いた。数羽の雛は日に日に大きくなり飛び立っていく。そのなかに、なかなか飛べない鳩が一羽いた。家族全員で応援したが、しかしその鳩も、ある日なにも言わずに飛び立っていった。

あの経験は、生き物がどういうものなのか学ぶうえで、きっと自分にとって重要な経験だったように思う。

鳩の話を思い出しているうちに山頂に着いた。
山頂には雪がちらちらかかっている。地面は凍っている。

フリースやダウンなどを着込み、お湯を沸かす。
フリーズドライのシチューを食べる。フランスパンをつける。うまい。
続いてチキンラーメン。あったかくて、うまい。
山で食べるご飯はうまい。

明日は平井のPARKで藤原さんのライブを見て、その後青山で片想いのライブを見る。

平井と青山の温度差を、どっかの山道具屋でザックでも選びながら埋めようか。