ある季節

さんまが55円で売られていたので、季節外れを承知で二尾買った。旬を外れていたとしても、さんまは内蔵の苦味がうまくて好きだ。ここ1年半もの間、ご飯を食べるときは大体フジロッ久のDVDを観ている。ぼくよりフジ久のDVD観てるって人がいたらそれだけで友だちになりたい。

さんまを食べたからか、血中エモグロビン濃度が上がった。

最近ちょっとやってみたいと思っているのが、いつかフジ久の藤原さんの口中体積を測ってみたいということだ。口に水でも含んでもらったら測れるだろうか。きっと彼の口の中の体積は、そんじょそこらのボーカルの体積より大きい、という根拠のない仮説がぼくのなかに生まれている。一般的な数字がわからない。ぼくの分をためしに測ってみた。120mlの水が限界だった。床が水浸しになった。いまからあの床を拭くうえでどんな心持ちで拭けばよいのだろうか。そして、さすがにこんなわけのわからないお願いを、どうお願いすれば良いのだろうか。ぼくにもわからない。

この前まで夜中に近くのドラッグストアやコンビニに行けばあんなに寒かったのに、今夜はこんなに気持ちがいい。名前の知らない花の香が漂う。少し甘い。香りが甘いとはどういうことなんだろう。こんなときに外で飲む炭酸はそれだけでさいこう。ドラッグストアで68円のオランジーナを買って飲みながら帰った。炭酸のキャップを開けた瞬間に出る白い煙を余すことなく飲み込む一口目が好きだ。

日曜日は板橋や東十条などの商店街を散歩した。懐かしい気持ちになった。石神井川京浜東北線。製紙工場の貨物列車の線路。夜泣きがひどかったぼくはいつも父親に連れられて近くの貨物列車を見に行ったようだった。仕事をこなしながら行うそんなことがどれだけ大変なことか、いまになればわかる。いまにならなければわからなかったことが少し恥ずかしい。ぼくらの想像力には、距離をゼロにすることもできる力があるのにもかかわらず、ぼくはこんなに使いこなせていない。

距離をゼロに近づけることについて、もう5年近く考えている。それは速さとは関係ないことなのだろうか。誰かとだれかの距離が一瞬でゼロになる。そんなことが想像力のなかにはおこりうる。そんな現象がいったいどういうことなのか、ぼくにはいまいちわかっていない。

火曜日。元気が少しだけなかったので、くだものを買いにスーパーへ行った。たけのこが158円で売っていたので思わず買った。果物は買わなかったことに帰宅後に気づく。果物が食べたかった訳じゃなくて元気になりたかったので、たけのこを茹でて楽しくなろう。小さい頃、たけのこが大好きで、母親はよく、ぼくのためにたけのこご飯をつくってくれた。

甘鮭の切り身を焼く。鮭うめえ。こんなにおいしく育ってくれたおかげでぼくはいま幸せです。それから名古屋の友だちに教えてもらった梅干しとハチミツの豚巻を作った。めちゃくちゃうまい。梅干しが赤いので火が通ったかどうか確認が難しかったのと、フィーリングで入れたハチミツの量が少しだけ多かったかもしれない。たぶんすこしだけ生で食べてしまった。胃腸弱者だがこういうのは強気だ。しかしめちゃくちゃうまかった。もう少しアレンジを許してくれる度量の広い料理な予感がした。これはまたつくっちゃう。作ってるときにハチミツとあえた梅干しの色がきれいなのがさいこうでござる。

冬の間はベッドで眠るときに毛布を一番下に敷いていたけどもうさすがにいらない。暑い。夜中、窓をすこしだけ開けると気持ちがいい。喉を痛めないように気をつけて、気持ちよく眠りたい。それからGWの間、どこかしらで衣替えをしたい。こたつもそろそろ毛布を外そう。いつのまに、もう、こんな季節らしい。