発売前だけど、ザ・なつやすみバンド「PHANTASIA」への想像を膨らませる会

発売後の感想はこちらです。
ザ・なつやすみバンド「PHANTASIA」について - 社会の窓はあけておくんだよ。



ザ・なつやすみバンドが3rdアルバムの発売を発表しました。大好きなバンドのアルバム発売は、いつだって嬉しい。2016年は、フジロッ久(仮)、ザ・なつやすみバンド、片想いとぼくの好きなバンドたちがこぞってアルバムを出してくれる。フジ久は3枚目のDVDまで決まっててもうさいこう。また100回観る!

音が届くまでの時間ってやっぱりワクワクするから、それも大切にしたい。となればタイトルと曲名、現場で鳴ってた音だけで想像を膨らませるのも、これまた一興。いましかできないこと。そう思って、いち早く書きたい。まだ発売前だけど。

ザ・なつやすみバンド「PHANTASIA」
01. ファンタジア
02. Odyssey
03. FULL SWING !
04. 森のゆくえ
05. O.V.L.U.V. part1
06. Donuts
07. GRAND MASTER MEMORIES
08. lapis lazuli
09. summer cut
10. O.V.L.U.V. part2
11. 蛍
12. ハレルヤ
※2016/7/20発売

まず、アルバム名。2nd「パラード」で日常や生活に近接したなつやすみバンドの次作が「PHANTASIA」なの、めちゃくちゃよくないですか?丹念につくられた物語のコアには必ずリアルがあって、そういうマジが宿った虚構って深く進んでいくといつしかリアルに反転する瞬間がある。人の心に刺さる類いのファンタジーとか物語ってそういうものだとぼくは思ってて。そういうことを1st「TNB!」で(おそらくは無自覚に)やっていたのが彼らで、それを意識して鳴らすのが今作なんじゃないかってちょう勝手に思ってます。発売前だけど。

クールでかっこいいジャケはやっぱり惣田紗希先生。中身のCDケースはまた円型不織布だったらまじさいこう。そんなジャケや曲名を覗く限り「夜、闇」みたいなテーマが散らばってることに気づく。ラピスラズリとか蛍とか。星座とか。彼らは夜の黒で絵を描くのかもしれない。朝が来る前に君に見せなくちゃってね。もしかしたら夜そのものではなくて、そのなかで明滅したりまっすぐ伸びるようないろんな光を描くのかもしれない。光と影の間にはいつも存在があるから。あまりに大きな待ち合わせ中の音楽家たちは、いつも存在を期待して音楽を鳴らすから。

それから、価値観は振り切ると反転するっていう運動とオディッセイアなどの古代ギリシア的な世界観、夜と光、記憶と忘却、それらすべてをつなぐ概念が円環(Donuts)。ユダヤキリスト的な終末思想ではなく、いまをいきるおれたちの週末的思想!なーんていうのはきっと、鳴る音の前ではぜーんぶ蛇足。風呂場で洗い流しましょう。

...ここまで書いて、てんで検討外れだったら面白いな(不敵な笑み)

確かなことだけを書こう。ふたつ。ファンタジアから始まったアルバムが、豊かなリズムに乗りながら物語りを進んだ先に「日々は旅だ 君に話すためのこと」と繰り返すハレルヤで結ばれる。それだけは確かなこと。あのトランペットが照らす先の先の先っぽでは、ファンタジアが現実以上のリアルに反転するアクロバティックが起こる。それだけは確かなこと。

ただの独立した音符や単語が、ひとつの曲に並ぶことで結ばれる星座。ただの独立した曲たちが、ひとつのアルバムに組まれることで結ばれる物語り。ただの独立したアルバムが、ただの独立したぼくたちに届けられることで結ばれるぼくたち。その星座は聞き手のぼくらをどう照らし、何を物語るのか。

とまあいろんな想像を膨らませて、一昨日、原宿のアストロホールでなつやすみバンドのライブを観てきた。カジさんの人柄とかコンコスのアツいライブとか小西さんの早回しとか色々あったけど、なつやすみはなんだか4人ともみんな、普段より少し嬉しそうに音楽を鳴らしていた。中川さんはリズムを掴もう掴もうとして、キーボードを弾きながら身体は縦ノリしていた。なりふり構ってないあの姿が忘れられない。確かいままでは椅子に座って足でパタパタとリズム刻んでいたはずなんだけど、無意識に全身で叩いてしまうほどの曲たちなのかもしれない。もっと言えば弾き方だけじゃなくて歌い方も変わってた。彼女の歌の魅力、そのひとつに声の表現の多さがあると思ってるんだけど、昨日聞いた歌には、歌の表情に理由があった。もっと言えば聞き手の心に理由を授けるような歌だった。それから、もしステージに立つ歌い手としての役割みたいなものがあるとするなら、それも引き受けてくれている感じがした。あんなに天才なのにまだまだ成長してるのほんとすごい。

先行配信してるという「森のゆくえ」、都会のたぬきから着想を得たというMCがあったのですが、都会のたぬきと森のゆくえをどんな魔法で結ぶのか、その展開の面白さは、ぜひ現場で味わってもらいたい。こういうの、インタビューで読むんじゃあもったいないぜ。ぼくはそのMC聞いて「たぬき...!?たぬき!!!」となりました。おっけーおっけー。
歌詞はこれまでのなつやすみバンドの軌跡を結ぶようなターミナルソング。曲調は「君に添えて」や「天の川」を連想するような、Eテレっぽいけれど甘すぎず、一筋縄ではいかないような少しひねくれた感じがまたなつやすみらしかったです。

植物が昆虫や風を信じて自身の受粉を託すように、音楽家が聴き手を期待して音楽を作り鳴らし届けるように。ぼくらだって、自分以外の存在に手紙を贈るみたいに、日々を進んでいけばよい。

「日々は旅だ 君に話すためのこと」

君に話すための日々。誰かを期待さえしていれば、そんな日々のゆうびんやさんにぼくらはなることだってできるのだ。
そう思って日々を続けていくのは、きっと新たな希望でしょ。



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