心の田んぼに育つ思い

なつやすみバンドのツアー番外編へ行った。彼らをキチムで観るのは何回目なのか、もうよく覚えていない。キチムのおいしいごはんスペースを削ってもたくさんのお客さんに観てもらいたかったのがよく分かるほど満員。決してイヤにならないくらいの密度で、あったかくてとても良い雰囲気だった。
冒頭のファンタジアからピアノを捨ててマリンバ。オリエンタルな雰囲気で、こんなアレンジが残っていたのかと感心した。なつやすみバンドの次作に向けた挑戦のひとつなのかなとか考えたけれど、たぶんもっとシンプルな理由だ。周りはみんな、こどもみたいな顔で聞いていたね。

折に触れて迎えたゲストの女性ボーカル3人もとても豪華。優河さんはチャボ周りのファンが絶賛していたので名前はよく聞いていたけれど、ちゃんと聞くのは初めてだった。歌の説得力。ウラウラと唄うその様よ。歌唱力をひけらかす必要もなく、祝福されていることが誰しもすぐにわかってしまうことが本当の才能なのかもしれない。一つ一つの所作や言葉選びに、気品というか育ちのよさ、決してひねくれたりしない強さみたいなものを感じる。ああいうのはどれだけのコンプレックスを乗り越えれば身に付くのだろう。コルネリさんやyojikさんの歌もとても良かった。コルネリさんの登場シーン、ぼくはポンコツなのでマジで結構な間「あ、シラフさん衣装変えたんだ〜」と思ってました。眼が悪いので歌だけ聞いてたらはじめは柴田聡子さんかと思いました。ポンコツが過ぎる。
そして最後の2曲、GRAND MASTER MEMORIESとハレルヤが実に素晴らしかった。金曜日にタンバリンを叩きすぎて内出血した左手を忘れて思いっきり拍手した。幸せなら態度で示そうよ。

終演後、外に出ると空気が冷たい。マフラーを出す。服の内側に残るあたたかさを逃さないようにしなければ。あのまっすぐな道を歩きながら、良いバンドだな、とつぶやいた。刺すような空気が懐かしい。冬は好きだ。少しお腹が減ったので、洞窟家へ行きラーメンを食べて帰った。キャベチャーは頼まなかったけれど店員のボーズさんは健在でした。電車のなかで今日のライブについて考えた。ライブ中、いろんなことを考えていたけれど、ほとんどなにも思い出せない。心の田んぼに置いてきた。田んぼだけが残った。思ったことは日々のなかで勝手に育つのかもしれない。だから思い出さなくていい。言葉遊びに溺れてはいけない。

お風呂のあたたかさだけは信用しても良いと思う。