華金の米屋

華の金曜日、米屋へ。去年母親からもらったブランドのお米がおいしかったので、仕事終わりに自転車を走らせた。もう一年も前のことだけれど、とてもおいしかったのでお米の袋に書いてあったお店の名前も生産者の名前も覚えている。華の金曜日に米屋へ行くような28歳だ。ほんとうに良い歳の重ね方をしている。どうしてももう一度食べたいのだ!自転車にまたがる。辺りはもう暗い。ライトで地面と行く先を照らす。食欲でペダルを回す。20分ほど走ると目当てのお店、東京都北区、東十条と赤羽の間に位置する「篠原ライス(東京都北区のお米屋 農家直送米篠原ライスのホームページとオンラインショップ)」に到着した。

お店にはいかにもお米好きという風体の大将(おそらく二代目)とお母さんのようなふたりがいた。前の人の接客を終えたばかりのようだ。中を見せてくださいと話しかけ、中に入る。お店のなかにはたくさんのお米が玄米の状態で樽に入り並んでいた。去年食べたお米がおいしくて、と伝えたところ嬉しそうにしながら並んでいるお米を説明してくれた。

まず、ぼくが去年食べたお米の説明を聞く。長野県信濃町落影農場(http://ochikage.com/product.html)の斉藤寛紀さんがつくるコシヒカリ。土や水、肥料などのために少し固めの食感のお米、ずば抜けた甘さが特徴。今年は去年よりさらに良い出来だそうで、なんでもこのお米は世界でもっとも有名なお米のコンクール「米・食味分析鑑定コンクール」で2年連続金賞(15回、16回)なのだが、去年は少し玄人好みする出来だったところ今年は少し米作りのやり方を変えたのだという。生産者の斉藤さんのやりたいことと結果が両立、玄人も認めながらも万人に受け入れられるお米になっているらしい。これは期待が高い。

もうお米屋さんと話している節から仕事への誇りや情熱が伝わってきてしまう。安心とおいしさを届けたいという気持ちがにじみ出ている。「実際に生産者の田んぼやおうちまで足を運び、相手の人となりや米作りの思いを知らないと、お客さんに売りたいとは思わない。」彼はそう言った。フットワーク軽く日本中を訪れる彼の話がどれも面白く、結果、1時間も話し込んでしまった。継いでから10年とおっしゃっていたが、こんどは彼の重ねてきた苦労について話をうかがいたい。お米を買うのにこんなに迷い、これだけ時間を掛けたのははじめてだった。色々詰まったこのお米は絶対おいしいしとても豊かな買い物だ。買い物には本来これくらいの熱量を込めたいところだ。買い物そのものに手間や時間を掛けて、買い物で豊かになりたいではないか。

この日買ったのは先に説明したコシヒカリ2kgと北海道蘭越米の宮武正人のつくるゆめぴりか2kg。去年おいしかったコシヒカリと対をなすお米で自分の好みを探りたい、というオーダーでこのゆめぴりかを出してくれた。その場で精米してくれる。お会計のあとに、試食で会津のお米を出してくれた。少し固めでとても甘味が強く、振ってある塩がもう名人芸。こちらのお米は銀座久兵衛に卸すお米のひとつ。久兵衛は9つの産地のお米をブレンドして品質を保つのだという。久兵衛のお寿司は食べたことはないけれど米の1/9は今たべました!それだけのお米にも関わらず値段は決して高くない。契約農家との直接販売のおかげだろう。さすがに5kgで1500円、というわけにはいかないけれど。

夜道にお米を背負い自転車を走らせた。途中、電動自転車のおばさんと競争の格好となった。家に帰り、精米したてのまだあったかい米を炊いた。その間にスーパーでご飯のおともを買い込んだ。

新米さえあれば、さいこうの晩ごはんが始まるぜ!
All you need is 新米!