昔のひとの和歌のように

日曜日、西千葉駅で降り、しばし大学をぶらぶらと歩く。お世話になった先生やサークルの部屋にいってみようと思ったがなんとなく一人でいる方が良い気がしたので、ひとりキャンパスをぶらぶらした。語らいの森という公園ではお父さんと幼児が散歩をしていた。子どもは実にかわいいなあ。かわいいだけではない苦労など28にもなってひとつも知らない。でもかわいいものはやはりかわいいのだから気兼ねする必要などない。これからも胸を張って人様の赤ん坊を愛でていこうとおもう。掲示板に掲示期間が4年も過ぎた僕らのサークルのポスターが貼られていたので後輩にLINEした。キャンパスを回ると、とても落ち着いた気持ちになる。

キャンパスをゆっくりと巡ったあと、千葉駅のパルコへ向かった。最大90%オフなのでお客さんがすごい。こんなパルコは見たことないよ。中川さんの頃には雨が結構降ってきて、野外なので雨具と傘を指していてもなかなかに寒かった。しかし中川さんの歌は実にきれいに響いていた。1stの頃と聞き比べると、歌の声がより澄んでいる。せかいの車窓から、若者のすべて、みずうみなどソロではお馴染みの曲が続く。目を閉じて聞いていると、こころがすうっとする。どの曲だか忘れてしまったのだけれど、改めて輝いた歌詞の一節があった。あえて調べ直すことはいたしません。あの輝きは勝手に育ってまた出くわすと思う。いやしかし、その言葉を聞いたときにぼくは、そういえばこの歌詞は中川さんの歌詞だなあとつくづく思った。希望のやさしい描き方に中川さんらしさが出ていた。一昨日あたりにつくったという新曲がこれまた良かったのだけれど、曲紹介がとてもエモくてさいこうに素敵でした。あれは中川さんのラブなレターだったんじゃないか。夏の庭、君の声。夜で閉じるセットリストもなんとも味があって良かった。パルコ終わっちゃうのか〜。終わってから少しだけ話した。その話が面白くて、まだライブ中だったのに高らかに笑ってしまった。

帰りはナンパ通りから帰った。この通りはなにも変わっちゃいない。深夜に入ったカラオケ、テスト期間中にお世話になっていたマンガ喫茶、先輩の追いコンをしたお店、ぼくらの追いコンをしてもらったお店、卒業式の日に入った居酒屋、さんざんゲロでトイレを汚しまくったお店、深夜に食べたラーメン屋、あの頃マックは冷房が厳しかった、酔っぱらいすぎて先生の肩を借りたこともあった。(この先生は先輩の家で5次会の宅飲みしてるといきなり先輩の耳を舐めて「しょっぺえ」とか言い出すひとなので確実に頭がおかしいのだけれど、50歳過ぎて趣味のマラソンを年間で1万km走るそのバイタリティは尊敬している)。先輩の追いコンの日には先輩から懇願されて手作りのスナフキンのコスプレをして1日過ごしたこともあった。ハロウィンでもないのに。こう見るとつくづくクソ大学生みたいですがぼくらのサークルは、活動はクソ真面目にやって飲み会では真面目に不真面目に振りきる優良サークルだったのでこれで良いのです。ナンパ通りはちょっと変わった日めくりカレンダーみたいなものだ。道の一つ一つに思い出が貼り付いていて、その場所を通るとシールが剥がれ、それをめくっては元に戻していく作業だ。寒いけれど気づけばすっかりと装いの変わってしまった千葉駅に着いていた。

千葉駅から東京に帰ってくる総武線のあのゆりかご感。あたたかくて、気づけばぐっすり眠ってしまう。けれどぼくは必ず秋葉原駅の手前で起きることができるんですよね。あれはぼくが5年磨きあげた特技ですね。寒いので「湯タンポとさんぽ」と口ずさみながら帰路に着いた。