【速報】〜自炊する気持ち、決勝で敗れる〜

無事に繁忙期、すべての仕事が終わった。よくやった。よくやった。ゆっくり休もう。定時にあがり帰宅。久しぶりに晩酌をするつもりで舌を準備した。家が近いので18時には家についてしまう。鱈の切り落としが安く売っていたのでバターと味噌と醤油でたまねぎとともにホイル焼きにした。先日の会話に影響されたのか、豚バラスライスを買ってキムチと大葉を巻いた。それから豚ロースも安く売っていたのでたまねぎと一緒に生姜焼きの下ごしらえをした。鱈のホイル焼きを肴に、土曜日に買った日本酒をすこしだけ嗜む。谷川岳は良い酒だ。個人的には獺祭39よりもずっと好みだ。こんなに良い日なのに5号炊いた米が失敗していたのでおかゆにした。かぶとせりで炊いた。

闇が深すぎる黒い噂を耳にした。秘書にからだの関係を要求したとかしないとか、その秘書が退職になっただのならないだのそんなクソのくさったみてえなゴシップでおれの貴重な鼓膜を振るわさないでほしい。なんでゴシップで汚された気持ちまでもわざわざ自分で濾過しなくてはならないのか。成宮くんの話もおんなじだ。事実の確かめようもない話に惑わされてはいけない。あー世直しマンになりたい。修正マンとスーパースターマンにもなりたい。ゴシップと悲しいニュースしか聞こえないくらいなら、ぼくの耳はトンカツになってほしい。

イケメンの後輩が既婚者の先輩と渋谷のバーで女の子を引っかけにいくらしい。クリスマスの3連休に女の子にスノボに行こうと誘われたと自慢してきた。しかも「でも行きたくないんですよね、ぼくはスノボだけを楽しみたいんで」とか言ってるんですよ。なんなんすかこれ。もうこんなんいっそ病気でも移されて困ったことになるしかないだろうな。

世界の悲しみを東京の西から運び、だんだんとヘドロ臭を撒き散らして海へと流れていく神田川。動物の死骸も乗り捨てられた原付さえも受け入れて、あの細い川はきょうも流れている。並走するランナーが追い越しては消えていく。井の頭線や中央線は人を運び、いつかあの川を渡していく。希釈と撹拌を繰り返したヘドロみたいなぼくの嫉妬もいつしかあのひとつとして流され、やがては雨にとけて山に還っていくのだろう。そして朝にはきれいなゆりかもめが西に向かって、水面に沿って飛んでいくのだ。キラキラひかって朝だけはきれいなことをサラリーマンとOLはよく知っている。今日は自炊をしよう。そんなことを考えながら朝を迎えた。

歯医者に行った。歯科衛生士のお姉さんが新入りの方らしく、先輩の主任チーフみたいな人から色々教えてもらっていた。マスク越しでもかわいい人なのがわかる。目の輝きがすごい。ここのスタッフはなぜかみんなきれいだ。かつて童貞だった血が騒ぐ(騒がない)。説明してもらうときに顔が近すぎてドキッとしたっておまえきょうびマンガでもないだろ(ある)。いざ治療が始まる。汚れをおとしてもらった。無心できゅいーーーんを受け続けた。歯じゃなくてほっぺの裏側に当てられたので痛かったけどなるべく我慢した。治療が終わり、はーいゆすいでくださーいと椅子を上げるときに横で大きな音がした。なにかが割れる音。どうやら手順を誤り設備を一部壊してしまったらしい。すぐに先輩が飛んできた。この女性はわるくないとおもった。だってかわいいし。まあもっと使い勝手の良い設備を導入すべきだよな、と甘えたことを思っていたら先生もまったくおんなじフォローをしていて、メーカーに写真撮って使い勝手が悪い機能性がないとクレームいれようって言っててウケた、それはさすがに寄りすぎだろ。先生のいいカッコしようという気持ちにもてあそばれるメーカー営業さすがにちょっとかわいそう。世界は下心でうまくできている。

帰り道、今日は自炊するぞー(メラメラ)という気持ちで歩いていると、目の前に「尾道ラーメン」の看板が。序盤攻勢を保っていた自炊する気持ちだったが、ロスタイム、くさびに入った尾道ラーメンの文字にディフェンスが崩され、決勝点を決められた。監督は「すべて私の責任。食材たちはよくやってくれた」と語っていた。