青春18切符

ことしは息つくだけの暇もなく頑張って働いた甲斐もあってか20日から6連休をもらえる運びとなった。文庫小説2冊くらい抱えて旅に出ようとおもう。しかし行き先がまったく定まらない。もういっそのこと宿も行き先もなにも決めずに、すこしばかりの金と着替え、念のための寝袋くらいをバックに詰めて電車に乗ってみようかと考えている。しかし寒いだろうな。本当は東南アジア、たとえばインドに行って季節外れの沐浴でもしてみたいのだけれどパスポートは切れているし、飛行機で石垣島に行くにはいささか予算オーバーな気もするし。雪山に行こうかとも思ったけれど、この時期テント泊するだけの装備はないし。できない理由ばかり数えていたくない。22歳以来、旅といえば登山くらいなもので、旅特有の、なにか大きなものに導かれるような感覚がすこし懐かしい。おとなしく我が家の大掃除なんかをしてもいいのだけれど。

ゲストハウスで半年間働いていた頃、よくアラサーと言われる世代の若者があの頃多く集っていたことを思い出す。いまとなってはぼくはあの人たちの立場になるのだろう。あの頃、みんな社会に出てスレた心を濾過するように旅に出ていたのだろうか、いまとなってはよくわからない。

そうだ、青春18切符を使って、28歳の旅をするなんていうのは、いささか酔いどれ過ぎている気もするがわるくない。名前が良いよなー、青春18切符。ノスタルジーともちがっていて。青春しちゃえる切符。せっかく生きてるんだしな、まあ少なくとも18回くらい青春してこう。

いつか書いた言葉が現実になる。「久しぶりの旅が幕を開ける。旅のどこかで偶然がぼくらにぶつかってくる。予定とちがうハプニングにあなたは少し困惑するかもしれない。しかしその外れた寄り道こそが旅をあなたのものにしてくれる。」あまり有名でない駅で降りたりして、なにも起きないことを確認したり、想定外のことに出くわしたりする。まったく理不尽な扱いを受けるかもしれない。会ったばっかりの人と手つないだりキスしたりするかもしれない。ボックスシートのおばあちゃんと仲良くなって、飴玉をもらったりするかもしれない。そんな時間になるかもしれない。行きたい場所のない旅ならば、移動するうちに行きたい場所をみつければよいのだ。

とりあえず進路を南に。なるべくスマホに頼りたくないな。スマホがあるとどうしても効率的に名所を回りがちなので。行き先くらい自分の感性だけで決める旅だ。めんどくさくて、どんくさいことをたくさんしていこう。結果つまらなくなってもいいから、もっと自分だけの旅にしたい。紙の日本地図とノートだけは持っていこう。