ハードシェルを買った

年末年始は完全なる寝正月。今年は田舎でゆっくりしようという気持ちも、忘年会ラッシュと仕事最終日まで頑張ってきた疲れにあっけなく砕け散ってしまった。ひとりで寝正月。さいこうに安らいだ。

1/2、さかいやにて福引きを引き、6-7割値引いていたSUUNTOGPSスポーツ時計を見に行ったのだが、時既におすし。もうSUUNTOは売り切れていた。シュラフ(寝袋)のコーナーでふと隣を見ると、大学時代の友人、山仲間が立っていた。せっかくなので一緒に、と正月から登山ショップをはしごした。店頭に並ぶ服の素材を軽く触りながら何の素材かを自然に判別している自分達に気づき、ふと「ついにここまできたか...」とお互い自嘲混じりの感慨に耽った。結局この日は、キャンプチェアー(ALITEのマンティス旧モデル)が定価の4割引で売っているのを見つけ、10分近く座って考えた。山ギアの知識が六法並みに蓄積されているその友人が「座り心地はヘリノックスよりALITEだ」というのを信じて買った。

1/3、日帰りで田舎へ。おばあちゃんは95歳と99歳とのこと。すげえ。叔母さんの煮物が信じられないくらい上手で感心した。食べる限り、煮物というのは、味付けすぎず、煮すぎないことがコツなのかな。それにしても若い人が俺しかいなかったからか、おれへの結婚のせかし方が親戚一同によるオールコートのゾーンプレスみたいなプレッシャー。思わず監督はタイムアウトを欲した。

1/4、カモシカスポーツにて、ついにハードシェルジャケットを買った。ハードシェルというのは雪山登山でいちばん外側に着る服のことで、直訳すると「堅い殻」。雪山でもっとも怖い風(雪や雨)から身を守るための装備だ。約一年間、必要性を吟味し、数ヵ月迷った末の購入だ。登山を始めて4年目。ついにハードシェルを持っている側の人間になったわけだ。テントのときのように、各社の商品スペックや価格をエクセルで比較(こういうところに性格が出る)。5店舗以上はしごして何度も試着。選んだのは、finetrack社のエバーブレスアクロという商品。結果的には女性用のMサイズを40,800円で購入した。

この商品を選んだ理由。それは、①finetrackという会社への信頼感、②(ハードシェルのなかでは)比較的手軽な価格帯に備わる日本の雪山に活かせる多用なギミック、③ソフトシェルに近い動きやすさの3つが決め手だ。ひとつだけ懸念しているのはジッパーの操作感がすこし堅いところだが、これはもうグローブ装着時のコントロール能力を上げる練習をするしかないわけだ。次のモデルでは、ノースフェイスがYKKと共同開発した一体型ビスロンファスナーの搭載を求めたいところだが、価格を抑えるための工夫も併せて必要だろう。デザイン面はどうにもイモっぽいので多少不満もあるのだが、自分の身長から合うサイズ感などを考えても、これしかない。この値段では十分すぎる商品ではないか。

登山ギアを買う上で、「どのお店で、どの店員さんと相談して買うか」というのはめちゃくちゃ大切だ。相談に乗るだけの力を持つ人は、買い物に道筋が立つ。さかいや、finetrackあたりはどの店員もレベルが高い。商品知識も豊富で勉強してるのが伝わる。それからいかに手頃な値段で手に入れるかというのも、中流サラリーマン登山家には必要なスキルのひとつだ。カモシカスポーツのアウトレットやセール時期(年末年始、商品入替え、山の日etc...)をうまく活用することだ。さっさと次の山の計画を立てたい。つぎはどんな山登りにしよう。

1/5は仕事始め。仕事を片付けつつ、「年始の挨拶だけはしっかりやろう、それが今日の仕事の95%だ」とだけ考えた。課長に電話したら完全に正月ボケしていて笑ってしまった。いつものスーパーがようやっと営業していた。ほっとしたら隣のおばあちゃんが「やってるやってる!やってるやってる!」って嬉しそうにはしゃぐこの街は今日もラブアンドピース。夜中に地震。311のときに布団で寝てた背中を貫いた太くて鈍い突き上げを基準として、この後にやって来る地震の大小を判断する能力を得ているので慌てない。

1/6、三連休なので山に行くことも考えたが、錆び付き先が丸くなっているアイゼン(登山靴に装着する雪山用のスパイク)を磨いた。

1/7、昼からキャンプチェアーをザックに詰め、みかんと大福、熱い紅茶を淹れて、新宿御苑へ向かった。低い日差しの中、椅子に座って4時間近く読書を楽しんだ。4時間座り続けてもまったく疲れなかったので、やはりこの椅子は買って良かった。家でも使い倒すぞ。
しかし公園の親子連れはどうしてこうも愛しいのか。トタトタと走りトテっところける子どもの愛くるしさ。仔猫かな?バドミントンのラリーを続ける度に「生きている!」と投げ掛けるカップルがいたのだが、どう見てもバカだけど、キミに1000%まじ御意じゃん。

閉園後、石井スポーツと秀山荘へ。歌舞伎町ではもうお決まり、くたびれたような風俗の勧誘と裏DVDの営業を縫うようにして進んだ。それにしても山をやるようになってから風俗勧誘は緩やかになった気がする。
秀山荘は知識が豊富な店員がいるので池袋時代からよく通っていた。新宿に移転してからも元気そうで何より。しかし新宿の街はみんな咳やくしゃみをしていた。この日はマスクを忘れてしまったので、もう耐えられなかった。帰り道にお腹が減りすぎて入った大阪王将では二日前までインフルエンザだったという腐れ外道がのうのうと隣の席で友人と話していて、12個の餃子を口に放り込み速攻で店を後にした。歌舞伎町を抜けるまで口もとをマフラーで隠し、不審者による防災訓練のごとく、そそくさと消えた。