土日のこと

土曜日、OJTとして慕ってきた先輩が結婚式をあげた。1.5次会と言われた会場に着いたら偉い人ばっかりで、思ってたんとちがう、と緊張してしまった。ああいう場で萎縮せず自分であり続けるくらいの自信と器がほしい。海を渡って厳しい環境で仕事をし、そこでしっかりと周りの信頼を勝ち取っているあの人を誇りにおもった。反対に、自分の仕事について色々と振り返るうちに自信をなくし、必要以上に不安になった。最近の口癖は「大丈夫」で、誰も言ってくれないから、心をなでるような気持ちで何万回と自分に言い聞かせている。そのうちに、不思議な説得力を持つようになってきた。構わないのでやべえ奴だとおもってください。降水確率10%なので洗濯物を干していたら小雨が降ってきたので洗濯物を取り込んだ。そこからの記憶がない。

日曜日、お昼から元希さんの新バンドのレコ発(対バンはフジロッ久(仮)藤原さん)に行く。意識が高すぎて開演1時間前に到着。向かいにあるおしゃれなカフェでバナナチョコクラッシュをオーダー。なんだその名前は、プロレスの必殺技かよ。開場後、ステージにひとりで準備する藤原さんを見つけた。ふと、ひとりというのは不安だろうな、と心情を推し量った。

ほとんど半年ぶりとなった藤原さんのライブ。タイミングがどうにもこうにも合わなかったのだけど、なんとなしにどこか肩身が狭い気持ち。所在なげにお酒を飲んで口寂しさを埋めた。始まってもやっぱりなんだか心細く、音楽の余白がいつもより大きく感じた。

ライブ全体をみればしっかり良かったのは間違いない。だけど、最大限の敬意を込めて言えば、おれの知ってる藤原亮の音楽はあんなもんじゃない。昨日の歌を手放しで褒め称えてしまっては、僕が夢中になった藤原亮と、夢中になった過去の僕に嘘を吐くことになる。後半、一緒にやるつもりのなかったという元希くんを呼びこんでからは歌の冴えが取り戻されたかのようにしっかり良く、「PARK」「あそぼう」ではノックもなく心にズカズカと入ってきてくれた。全身から歓びが溢れだしてくるような感覚が確かにあった。

藤原さんの言葉はこれ以上分けることのできない素数みたいで、気持ちよいくらいに心のキャッチーミットが音を立てるわけだ。キャッチャーインザライブハウス。これ以上言葉を尽くせば野暮ったくなる絶妙のラインで留める。フジロッ久(仮)完全復活祭@日本武道館*1まで数年スパンでゆっくり待っているので、手加減なしで来てほしい。あふれる声が示してる場所に向かって、お互い決勝目指そう。

「フジロッ久をまた始める前に、単純にやり残したことがあったから、それをやりたいと思った」

そう言って、新グッズのトートバッグ(裏方元希くん)とともに新曲を描いてきた。曲は間違いなく良かったので、やっぱりこの人はソングライターとして祝福されているなと思った。曲名はまだらしい。リビングダイニング、みたいな曲だった。

元希さんやろっきーさんとの距離感を見るにつけ、どうも複雑な気持ちになってしまうのは、ファンの未練たらしさか。しかしおれはもう分かっている。あのメンバーが揃うことは、もうない。ただどちらかと言うと、喪失感よりも新しいバンドへの期待が勝っているかもしれない。むすんでひらくような関係性も、別にそれほどわるくないんじゃないか。フジロッ久ならちがう方法があるかもしれない。もしいまの名曲たちをすべて捨てたとしても。今年はやるぞと言っていたので期待してる。

元希さんの新バンド、ソウル溢れる下地という点で、やりたい音楽はフジロッ久に似ている。しかし方法論が決定的にちがう。どっちが良いのかは、正直よくわからない。その人が大切にしたいものに大きく依っているからだ。天地創造パンヤオ、東京徒競走が良い曲で、特にサックスアレンジがよく効いていた。バンドの音に押されて飛び跳ねる元希さんの姿。Yeahひとつで沸き上がる激情。

超ライブのツアーを始めたのはこの場所で、その時の記憶を呼び出していた。おれはフジロッ久から受け取ったものを育てて、耕して、いまサラリーマンとして働いている。それが一番大切だとおもう。自分から歩みを進めなければ。


あそぼう 見えるもの
あそぼう 消えるもの
花 君 東京
ただむすんでひらいて

それでもいつもわかってる
信じてる夢の中も夢の外も
同じことさ 手加減なしでゆこう

*1:東京にある小さなライブハウス